フィリピンのボクシングは戦後から現在まで一貫して高い人気を保っている。フラッシュ・エロルデ、ルイシト・エスピノサ、ペニャロサ3兄弟、ドネア兄弟、そして8階級制覇を成し遂げ、将来の大統領候補との呼び声も高いマニー・パッキャオ上院議員ら、フィリピン人ボクサーは数多くの世界タイトルを手にしてきた。学校中心のバスケットボールと違い、ボクシングではひとつの職業として、貧困層からも素質のある選手をリクルートできる体制が整っている。フィリピンのボクシング界は日本との関係も深い。戦後まもない時期に日本とフィリピンのボクシングを通じた交流は、両国間の戦後賠償問題の解決とその後の日本による東南アジアへの経済進出の突破口を切り開いた。パッキャオら一部の優秀な選手がアメリカを舞台に世界的な活躍を見せる一方で、多くのフィリピン人ボクサーは日本人ボクサーを引き立てる「咬ませ犬」として、アジア圏のグローバルなボクシング市場に構造的に埋め込まれている