20世紀に入ると伝説的なスポーツ・ヒーローがロシアに出現することになる。そのひとりはイヴァン・ポドドゥブヌイだ。
ポドドゥブヌイは1871年にポルタヴァ県のボゴドゥホフカ村に生まれた(現在はウクライナ)。ロシア帝国の辺境には特別に許されて自治を行なっていた武装集団コサックがいたが、ポドドゥブヌイもこのコサックの出身である。1897年に彼はサーカスのレスラーになった。当時のロシアではレスリングはショーとして、サーカスに組み込まれていた。
ポドドゥブヌイは1903年以降、西欧各地で開催されていたグレコ・ローマンスタイルのレスリング大会に参加するようになる。1905年にはパリの大会で世界チャンピオンとなり、その後も1909年まで、優勝を重ねた。
革命後もポドドゥブヌイは、ソ連でサーカスへの出演を続けた。晩年はアゾフ海沿岸のエイシクに居住し、第2次世界大戦後の1949年にこの世を去った。死後もその伝説は人びとの記憶に残り、1957年には彼をモデルとした映画『レスラーと道化師』が、ボリス・バルネットの監督で製作されている。