「第5章 クモヒメバチ ― 獰猛な捕食者を巧みに利用するスペシャリスト」入稿:『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』no.08
数多くの本を編集担当してきたが、まだ虫たちの行動に驚かされることがある。本章で紹介されているクモヒメバチの行動もそうだ。
クモヒメバチはその名の通り、クモに寄生する。
クモに産み付けられたこのハチの幼虫は、終齢になるころ、マユを作る準備をする。
ただそのマユを作る場所が問題で、「木の枝や葉の上にはアリやムカデなど捕食者が溢れていて具合が悪い」。
そのため安全な場所を確保する必要があるが、その際に利用されるのがクモの網だ。
しかし、「本来クモの網はとても壊れやすい構造物である。特にクモを殺してしまった後は、網のメンテナンスが行われないため、風やゴミの影響であっという間に崩れてしまう。」
そこで、クモヒメバチの幼虫は、通常の網とは違う、強固な網をクモに作らせる。
寄生したハチがクモを操作し自分に都合のいい網を作らせる解説と動画は興味深く、また「クモが一心不乱に操作網を作る姿」は少し怖い。
「寄主クモの行動が突然大きく変化し、その結果、通常と全く異なる構造の網が形成される。」
また、「クモ」と言えば捕食者のイメージが強い。
しかしクモヒメバチのなかには、
「円網を張る寄主グモを見つけると、周囲をホバリングして直接クモに飛びつく(コブクモヒメバチ)」もの、
「獲物と勘違いして飛び出してきた寄主に逆襲する(ニッコウクモヒメバチ)」もの、
「シェルター(植物の葉を持ち込んだもの)付近で待ち伏せて、獲物に反応して出てきたクモに襲いかかる(ブラジルのHymenoepimecis veranii)」もの、
など、それぞれにふさわしい方法でクモにアプローチしている。
今回の章の入稿はメール添付で送られてきた。
入稿データを見ると、およそ37メガなので、「今回の章には動画ファイルなしかな」と思っていたら、、、Wordファイル(文字原稿ファイル)のなかに、たくさんのリンクが挿入されている。
そのリンクをクリックすると、それぞれの動画サイトに移行できるようになっていた。
本章の見出しは以下の通り(ただし草稿の段階)。
・クモヒメバチというハチ
・産卵 ―死のカウントダウンのはじまり
・幼虫の異端の成長様式
・融通の効かないスペシャリスト
・クモヒメバチの多彩な産卵行動
・寄主操作
・現在から過去を辿る
・クモヒメバチの来た道
・空中網への適応
2020年前半、発売予定。
これから推敲を重ねていきます。