オスとメスの見分けかた(『昆虫たちの不思議な性の世界』)

 野外で見つけた昆虫がオスなのかメスなのかわからなかった経験はないだろうか。ここでは、一見よく似ているが、ちょっとコツがわかると簡単に雌雄が判別できる「役立ちテクニック」のいくつかをご紹介しよう(ただし、虫好き以外には何の役にも立たないが)。

−−昆虫はオスメスの見分けがしやすい種類もいれば、わかりにくい種類もいます。ではなぜ、わかりやすい/にくいといった2つの種類がいるのでしょうか。生存になにか有利なことでもあるのでしょうか。

そのほか、

  • カブトムシのオスの角はどのようにできるのか?
  • シロオビアゲハの擬態に関わる遺伝子の秘密とは?
  • ガガンボモドキやカゲロウのありえない交尾スタイルとは?

など、昆虫たちのオスメスにまつわる豊富な話題を『昆虫たちの不思議な性の世界』では紹介しています。下からより詳しい内容を紹介していますので、ぜひご覧になってください。

昆虫たちの不思議な性の世界
昆虫たちの不思議な性の世界進化するムシたちのラブストーリー編=大場裕一B6サイズ/308ページ/3800円+税/2018年6月25日発売/ISBN978-4-910389-03-5(旧ISBN978-4-909383-03-7)イ...

 セミのぬけがら

 セミの雌雄は、成虫ならば簡単にわかるが、実はぬけがら(脱皮殻)でも判別する方法がある。脱皮殻のおしりの先をよく見て欲しい。産卵管になる細い縦ミゾがあれば、メスである(図1)。夏になるとあちこちで見かけるセミの脱皮殻をヒョイと手にとって「あ、これメスだ」と言えたら、かっこいい(かもしれない)。

 ただし、種の判別は、脱皮殻だけからでは(泥が付いているのが特徴のニイニイゼミなど一部の例外を除いて)あまり容易ではない。

セミの抜け殻

 バッタ

 コオロギやキリギリスの仲間は、メスのおしりに長く突出した産卵管があるので簡単に雌雄が判別できる。しかし、バッタは、この特徴的な産卵管を持たないため、一見しただけはオスかメスかがわからない。大きい方がメスで小さい方がオス、だとよく言われるが、一匹だけ捕まえた時にはこの判断基準はあまり役に立たない。

 バッタの雌雄鑑別のポイントも、やはり、おしりの先である。おしりを真後ろから見たとき、縦に割れているのがメス。割れていないのがオスである(図2)。これがわかると、少なくとも子供は保育園でヒーローになれる。

 トンボ

 成熟したシオカラトンボのようにオスとメスで明らかに色彩の異なるものは簡単だが、色彩に違いのない(はっきりしない)種のトンボの雌雄を見分けるにはコツが要る。ちなみに、羽化したばかりで若いシオカラトンボのオスは、まだシオカラの粉を吹いておらずメス(ムギワラトンボと呼ばれる)にそっくりである。

 まず見るべきは尾(腹部)の付け根あたり。この部分の下側に副性器があってもっこり膨らんでいるのがオス、それがなくスッキリしているのがメスである(図3)。尾端の構造にも雌雄差があるが、これは複雑で少々わかりにくい。このトンボの雌雄判別法も、知っていると小学校くらいまでなら人気者になれるので、小さなお子さんをおもちの人は、ぜひ子供に教えてあげて欲しい。

 ゴキブリ

 嫌われ者のゴキブリにも、当然ながらオスとメスがある。ゴキブリの尾端には、オスにもメスにも尾葉とよばれる(尾角や尾毛ともいう)太い一対の突起が出ているが、オスの場合、それに加えて尾葉の内側に尾突起と呼ばれる細い一対の毛が生えている。一方、メスの場合、その尾突起がない(ただし、成虫の場合のみ)ことに加えて、産卵のためにおしりの先端が縦に割れているので区別がつく(図4)。

 格闘の末に叩き潰したあと、せめて戦った相手がオスであったかメスであったか、素性を認めてからゴミ箱に葬ってあげてはどうだろう。

ゴキブリの腹部

 カマキリ

 秋も深まって産卵が近くなると、腹に卵をたっぷり蓄えたメスは丸々と太っているからすぐにわかる。しかし、若いカマキリの成虫を一匹見つけただけでは、オスかメスかがわからないことがある。そんなときにチェックするのは、やはりおしり。

 オスにもメスにも尾角と呼ばれる一対の長い突起があるが、オスにはその内側に短い尾突起がある(図5)。すなわち、2本あるのがメスで、4本あるのがオスである(ただし、尾突起がわかりにくい種類もある)。つまり、ゴキブリの見分け方と基本的に同じ。実は、カマキリはゴキブリに比較的近い仲間なのである。

 尾突起がわかりにくい場合は、やはり産卵管の有無が決め手となる。おしりの先に中心に縦スジのある三角形の突出があればメス、なければオスである。

カマキリの腹部

 カ

 口器が一本まっすぐ伸びているのは、オスもメスも変わらない。大きな違いは、口器の両側に生えている触角の形状。鳥の翅のようにふさふさしているのがオスで、貧弱でまばらな毛が生えているのがメスである(図6)。

 人の血を吸うのはメスだけなので、オスは叩き潰す必要はない。もっとも、気づくといつのまに我々の腕に止まっているのは、ほぼ間違いなく人間の匂いを嗅ぎつけてやってきたメスであるから、触角を確認するより早く叩いた方が良い。

 その他

 普段よく見かけるハエや、危険なハチなども簡単に見分けたいところだが(オスのハチは刺さない)、その判別はあまり簡単ではない。ただし、ハチのオスは生殖時期の短い間しか現れないので、野外で普通に見かけるハチはどれもメスのワーカー(つまり刺すやつ)だと思ってほとんど間違いない。

 アリの場合、せっせと巣に出入りして働いているのはメスのワーカー(働きアリ)、繁殖期の限られた時期に街灯やガラス窓などに群がっている翅のあるのはオスである(ただし、たまに体が大きくて翅のある女王アリも混ざっている)。

−−このように、昆虫には生殖器や行動からオスメスを簡単に見分けられる種類もいれば、そうでないものもいます。

みなさんの中にも、昆虫を飼育していて、なかなか交尾や産卵や生育がうまくいかない場合も多いと思います。

  • どのようにして受精されるのか?
  • 求愛しているときの鳴き声の特徴とは?
  • 精子の受け渡しはどのようにされるのか?

など、多くの疑問を持っているかもしれません。

「昆虫クイズ! オナガバチからの挑戦状」

ハチはいつ生まれ、どれくらい種類がいるのか? コマユバチが寄生相手に注入する毒の効果は? 寄生バチが特に発達させたのは、産卵管ともうひとつは?

など、ハチたちにまつわるクイズを掲載。

他にも寄生バチについての、意外と知られていない話題などを多くの写真と共に紹介しています。

楽しんでご覧になってください。

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