生き物は、地球上にどれほどの数がいるのでしょうか?
どうして、それほどの数に増えていったのでしょうか?
その理由には、さまざまな場所や気候条件への適応があげらます。
そのような適応をみせる生き物のなかで、特別多くの種類がみられるのが昆虫です。
昆虫を通して、生き物が多様化した理由をのぞいてみましょう。
地球上の生物170万種。そのうちの100万種が昆虫!
「多いにもほどがある」と言いたくなるほど、昆虫の種数は豊富です。
地球上の生物170万種。そのうち100万種が昆虫。つまり地球上の全生物の6割が昆虫。動物に限って言えば7割が昆虫です。
ふだん生活していても気づかないかもしれませんが、通勤通学、学校や職場でも、どれほど人間や犬猫が目にはいってくるとしても、その近くにはもっとたくさんの常に昆虫がいるはずです。
このように見ると、「昆虫の世界のなかに人間が生きている」といったほうが実際に近いかもしれません。
では、その昆虫には、どのような種類がいるのでしょう。
昆虫にはどのような種類がいるのか?
種数の多い順に、昆虫を大まかなグループごとに分けてみます。
1位.38%=コウチュウ目(カブトムシ、カミキリムシなど)
2位.16%=チョウ目(ガ、チョウ)
3位.13%=ハチ目(ハチ、アリ)
4位.12%=ハエ目(ハエ、カ、アブなど)
————————–ここまでで79%—————————-
5位.10%=準新翅類(カメムシ、セミ、タガメなど)
6位.4%=多新翅類(バッタ、カマキリ、ゴキブリなど)
7位.11%=その他(トビムシ、シミ、トンボなど)
ご覧の通り、上位4グループでおよそ8割を占めています。
この4グループは「完全変態類」といわれる昆虫たちで、蛹(さなぎ)という形態の前後、つまり幼虫と成虫とで全く違う形態をもつグループになります。
では種の数はどれほどになるのでしょうか。
最も多いコウチュウ目では35万種です。これがどれほど多い数なのか、他の生き物とくらべてみると実感できると思います。
脊椎動物とくらべると、その全ての種数の6倍になります。
脊椎動物というのは、人間も含めて、鳥、魚、爬虫類、哺乳類などの総称ですから、その6倍という数がどれほど大きいか、分かると思います。
地球とは「昆虫の惑星である」といわれるのも、納得できるのではないでしょうか。
なぜ、昆虫はこれほど多く増えたのか?
ではそうなると、なぜ昆虫が特別多くの種に増えたのかが気になるところ。
これには、主に3つの答えがあげられています。簡単にひとつずつ見ていきましょう。
①飛ぶ
移動できる範囲が劇的に広くなります。これによって、「エサを探す」「子どもを産んで育てる」「敵から逃げる」など、選択肢が非常に増えました。
「飛ぶ」といえば鳥もすぐに思い浮かびますが、昆虫ほどの種はいません。
昆虫が特別多いのは、他に秘密があるようです。下の説明を見ていきましょう。
②変態する
幼虫と成虫がまったく違う形になります。これによって、幼虫は成長するのにふさわしい場所で活動できる、成虫は子どもを産んで育てるのにふさわしい場所で活動できる、というように、それぞれの段階にふさわしい場所で活動できるようになりました。
アゲハチョウがイモムシから成長するように、確かに他の動物では、ここまで劇的に変化するものはいませんね。
③休眠する
活動にふさわしくない時期には、エネルギー消費をなるべく抑えた状態で乗り越えることができます。
これら主に3つの機能によって、さまざまな環境で暮らすことができるようになり、種数も増えたとされます。
実際、「飛ぶ」機能は、昆虫全体の98%の種がもっているとされます。
そして、この「飛ぶ」昆虫うちの80%は「変態する」昆虫です。もっというと、「完全変態をする」昆虫であり、幼虫〜蛹〜成虫と形態を変化させる昆虫です。
自分たちがクラスのに最もふさわしいところに飛んでいけて、そこで気候条件に合わせて変態できる生き物である昆虫。この生き物が地球のあらゆる場所に生息できたわけも分かると思います。
数を増やす、そのための工夫
では、このようにたくさんの種がいる昆虫ですが、子どもをたくさん増やす、産むということは、大切な行動になります。どんな生き物でも、わずかな数の子ども・子孫からは、種が増えていくことはないでしょう。
最後に、昆虫たちのなかでも、特別工夫をこらした子どもの増やし方を紹介していきます。
①ガガンボモドキのプレゼント作戦とその泥棒
「あのこにこっちを振り向いてもらうには、どうしたらいいのか・・・」。人間でなくても、昆虫たちもこのような悩みを持っているかもしれません。
その証拠に、ガガンボモドキという、日本ではわりと寒い地域にいる昆虫は、メスに気に入られるためにプレゼントをします。「昆虫がプレゼント?!」と不思議に思う人もいるかと思いますが、これだけではありません。
プレゼントは大きいほどメスに気に入られ、交尾できる可能性は増えるのですが、自分では大きなプレゼントを用意できないオスもいるようです。
そのオスはなんと、他のオスの用意したプレゼントを盗んで、自分の気に入ったメスに渡してしまいます。
しかも、盗むときにはメスになりすまし、怪しまれないようにして盗んでいくというのですから、その執念にむしろ感心してしまいます。
大きなプレゼントを渡したオスは、プレゼントが大きいほど長い時間、メスと交尾をつづけることができます(ただし上限20分)。さらに、交尾時間が長いほど、自分の精子を送り込める量も多くなります(こちらも上限はありますが)。
昆虫も人間も、プレゼントこそ、メスとカップルになる大切な手段となるようですね。
②メスがペニスを持つ進化? トリカヘチャタテの交尾スタイルの進化
2017年にイグ・ノーベル賞受賞で話題になったトリカヘチャタテ(Neotrogla spp)。ブラジルの洞窟にすむこの昆虫は、なんと「メス」がペニスの形をした生殖器を持つように進化しました。
交尾の時に、メスはオスにマウントして、その「ペニス」を使って精子と栄養物質を受け取るようです。
洞窟の中という特殊な環境のせいで、この独特のスタイルに進化したとされていますが、では人間が特殊なところに住んでいたとしたら、どうなってしまうのか・・・。
性とは何かを考えさせられます。
まとめ
以上、「昆虫の種類はどうしてこれほど多いのか?」の不思議を明らかにするために、ざっと紹介をしてきましたが、いかがでしょうか。
これまでのことをまとめると、
・地球上の全生物の6割が昆虫
・そのうち完全変態類する昆虫が8割
・「飛ぶ」「変態する」「休眠する」によっていろいろな場所、気候条件でも生きることができる
・子孫を増やすための工夫も発達している
といったものになります。
もちろんこれで全ての理由となるわけではありません。
引き続き他の記事でも紹介していきます。
今回の記事は『昆虫たちの不思議な性の世界』の一部を引用して作成しています。
もっと昆虫の種類や性について知りたい方は、ぜひ手にとってみてください。
参考図書
『遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界』(大場裕一・大澤省三他編、2015年)
『昆虫たちの不思議な性の世界』(大場裕一編)
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