(この記事は2020年5月25日に一色出版メルマガとして配信したものです)
前回までのメルマガでは、
寄生バチの巧みな寄生方法を紹介しました。
今回は昆虫からやや離れ、鳥にスポットライトを当て、寄生という現象を見てみたいと思います。
おはようございます。
一色出版の岩井峰人から、
メルマガをお届けしています(年中無休、毎週月曜の更新)。
今回は、『遺伝子から解き明かす鳥の不思議な世界』(上田恵介編)
の中から紹介したいと思います。
雌雄で外見が異なる性的二型に加えて、雄内で年齢による二型が存在するルリビタキ。高齢な雄は青色(上)、若い雄はオリーブ褐色(中)、雌はオリーブ褐色(下)。後者ふたつの外観は見分けがつかないほど似ている。
その時、この仮親に自分が子どもと認識してもらうように、
ある工夫をしています。
ルリビタキの本当の子どもと同様に、
体の特定の部分が紫外線に特に強く反射するようになっています。
つまり翼の裏側と口内が強く反射するようになっていて、
盛んにそこをアピールしているようです。
これによって餌を仮親からもらいやすくなってい流とされます。
また、健康なヒナほど紫外線の反射が強いこともわかっていて、
餌がもらいやすくなっているようです。
(以上、「1章 鳥がみている色彩の世界」田中啓太より)
また別の鳥の托卵も見てみましょう。
「EPC」という言葉を知っていますか。
婚外交尾と呼ばれるもので、別のつがいのオスと交尾することです。
鳥の世界では少なからず、メスが間男と交尾し卵を産み、
夫との卵と一緒に育てることがあるようです。
例えばアオガラでもこの現象が見られます。
面白いのは、夫は自分の巣を羽で装飾しますが、
これがいじられた形跡があると、
間男の存在を疑い子どもに給餌する回数が著しく減ることです。
では、そもそもなぜ、メスは婚外交尾するのでしょうか。
いくつかの仮説がありますが、
最も検証されてきた説をみてみましょう。
メスはモテるオスとの子どもを産めば、
自分の子どももモテる可能性が高くなり、
より多くの子どもを残せるようになるために、
婚外交尾するというものです。
例えばツバメのオスは、尾羽が長いほどメスを惹きつける傾向があります。
そして間男になるオスは、尾羽が長い傾向にあることが検証されています。
また、別の仮説を見てみましょう
夫が自分の血縁者であった場合、子どもの生存率は低くなります。
このリスクヘッジのため、非血縁者である間男を父親として選ぶという仮説もあります。
さらに別の仮説によれば、キンカチョウによる検証では、
婚外交尾する個体は遺伝的に決まっていることが示されています。
つまり、「EPC をするオスの娘はEPC をするようになる傾向をもつ」(「5章 EPC 今昔物語」三上かつら)とされます。
このような遺伝的な相関性の検証は、「パーソナリティ」というテーマとして近年、
鳥類研究では注目されています。
今回は「寄生」という言葉を昆虫に限らず、
広く捉えて鳥の生態を紹介しました。
動物たちが、いかにコストをかけず、いかに確実に、いかに多くの子どもを残そうとしているか、
垣間見れたのではないでしょうか。
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』装丁が完成しました。
丸山宗利博士による推薦の言葉も帯に入れ、印刷手配できました。
丸山宗利氏 推薦!
「ハチというと人を刺す昆虫という印象を持つ人が多いが、大半は他の生物に寄生し、人に害を与えることはない。世界では15万種以上のハチが知られているが、その背景には寄生相手との駆け引きで進化した、驚くほどの生活様式の多様性がある。本書では日本の気鋭のハチ学者たちが、世にも面白いハチの多様性を余すところなく紹介している。」