一般的に魚は、水草などに卵を産み付けます。孵化後、稚魚は自由に水中を泳いで成長していきます。
しかし、東アフリカ産シクリッドの多くは、メスが受精卵をみずから咥え稚魚が十分に育つまで口の中で哺育をする「マウスブルーダー」です。
これは、卵や稚魚を捕食から防ぐという点から考えて、極めて適応的な子育て戦略であると考えられます。
そこでまず、哺育する前に必要となる、交尾の様子を図解してみます。
交尾のようす
①オスとメスは尾を激しく動かし、総排出腔(排尿口・生殖口を兼ねる器官)を相手の鼻先に示し、クルクルと回転する。
②やがてメスの総排出腔から一度に数粒の卵が産み出されるわけであるが、メスシクリッドは回転の最中にこの卵を拾い上げて口にくわえる。
③メスが卵を拾い上げる際に、オスは尻びれにある円形のスポット模様(エッグダミー)をメスにアピールする。
④すると、メスはこのエッグダミーを自分が産んだ卵と勘違いし、それをくわえようとして口を近づける。
⑤その際にオスは総排出腔から精子を振りまくことで、メスの口の中で受精が完了する
⑥回転しながらの行なわれるこのい交尾は、10分程度続けられ、最終的には数十個ほどの卵が産み出される。
この動画は
第4章
閉ざされた湖で起こった進化
〜アフリカンシクリッドの世界〜
(二階堂雅人)
『遺伝子から解き明かす魚の不思議な世界』
(2019年8月10日発売)
をもとに作成しています。