「自分が学生の頃にこんな本があったら良かった」
「研究を始める人には絶対に読んでほしい」
本書の読者に向けて、編者の上田恵介先生に、この本の魅力、どのような人に読んでほしいのか、鳥類研究への期待など、自由に話してもらいました。
ーー本書を最初にご相談差し上げてから2年くらいですかね、完成までは。
上田先生「はい、そんなところだと思います。」
ーー最初、執筆を依頼しまして、わりとすぐに「やりましょう」というお返事をいただいたのですが、どうしてすぐにOKを出していただいたのでしょうか。
「それは時代、研究の流れと思います。鳥の分野というのは研究のスピードが早くなってきていて、古い良い本があるものの、新しい発見が次々と出てきています。それをどんどん発信していかなくては、ということがあったからです。」
ーー今回の本は全19章、19人の筆者によるものですが、執筆者はどのような基準で選ばれたのでしょうか。
「それは現役バリバリで一番あぶらがのっている、30〜40代の若い研究者を中心に執筆してもらいたいなと、お願いしました」
ーー主にどのような人に読んでいただきたいと思いますか。
「専門的な難しい内容もあり軽い本ではないのですが、これから研究に向かう院生学生に読んでほしい、また絶対に役に立つ。自分の学生の頃を振り返るとこういう本はなかったですから。外国の本を必死になって翻訳するというところから始めねばならなかった。今こういう本ができて、本当に勉強しやすいなと思いますよ。」
ーー本書の魅力ベスト3をあげるとすれば?
「ひとつには、最新のDNA解析の最新の成果がいっぱい盛り込まれている。(2点目は)まだ論文で発表されていない貴重なデータが入っているということでしょうか。(3点目は)本はモノクロですけど、web版があって、そこではカラーで全ての写真が見られるという点ですね。本自体の魅力、宣伝ポイントになっているかなと思います。」
ーー先生の考える鳥類研究の課題、期待はどのようなものでしょうか。
「DNAが手軽に扱えるようになったことで野外研究、保全の問題ですね。昔は漠然と見た目で一種類に見えていた集団も(識別できる)手段を手にすることができてきた。きめ細かな活動ができるようになってきた。こういったことが新しい時代の幕開けのような気がします。」
ーー保全への期待ですかね。
「研究というのは大切ですが、それは実際の活動、保全など生物多様性の保護ということにしっかり向けていくことが非常に大事。今までセンスのある研究者が見で見て面白いと思ったことを扱っていたが、DNAを使えるようになって見えなかったことが解析して初めてわかるようになってきた。」
ーー今後もこのようなDNAを使った流れは増えていくと。
「はい、爆発的に増えていくと思います。そういった流れを解説し、きっかけになる非常に良い本だと思います。」
ーーわかりました。この度は、有り難うございました。
「はい、有り難うございました。」
(2019年11月23日、日本動物行動学会、大阪市立大学にて)