今、私たちが見ている世界は本当にそのまま存在しているのだろうか。
他の人や生き物には、どのように見られているのだろうか。。。
このような疑問をもった人は多いのではないでしょうか。
特にはるか上空から小さな獲物をみつけたり、オスが派手な色さいをもちそれによって結婚相手を選ぶ鳥たちは、どのような色の広がる世界を見ているのでしょうか。
この記事は『遺伝子から解き明かす鳥の不思議な世界』をもとに紹介していきます。
ハヤブサには見える「尿の道」
鳥には紫外線が見える?
実はハトやハチドリの実験から、1970年代には鳥は紫外線が見えていることがわかっていました。紫外線は人間には見えませんが、鳥はそれを利用して獲物を見つけ、捕獲することができるといえます。
たとえばチョウゲンボウ(ハヤブサの一種)は、ハタネズミをえさにしています。
ハタネズミの体のなかで紫外線を反射している部位はありません。ただ、その尿が紫外線を反射するようになっています。そのため、ハタネズミが通ったところに尿が付着して、チョウゲンボウにはあたかも尿によってできた「光る道」となって見えることになります。
その道をたどっていけば、ハタネズミの巣がわかり、待ち伏せて捕獲するすることができるというわけです。
これは人工的に作った施設での実験でも確かめられ、とても効率的にチョウゲンボウが獲物を捕まえていることがわかりました。
他の事例もあげてみましょう。
オガワコマドリのオスがアピールする紫外線の反射
オガワコマドリのオスは、のどに青やオレンジ色の美しい模様があります。より鮮やかで派手な模様をもつオスは、そうでないオスよりもメスに“モテる”ことができます。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
それにはやはり、紫外線が関係していることがわかりました。というのは、鮮やかな模様を持つオスに、紫外線を反射しない薬剤を塗ったところ、メスの興味は急に低くなったのです。
つまり、メスはオス選びをする際に、オスから反射する紫外線を重要な印としていたのです。
シジュウカラ、ジュウイチのヒナたちの紫外線アピール
シジュウカラなど多くの小鳥は、暗い巣の中でヒナを育てます。
こうした暗い場所で子育てをする鳥では、ヒナのくちばし部分の色が強くなる傾向があります。というのは、暗い巣の中でも親に対して目立つことで餌がもらいやすくなるため、と考えられています。
そのくちばし部分からは紫外線がとくに強く反射していることがわかっています。この反射が強いほど、親鳥からよく見えてえさがもらえやすくなり、また健康なヒナほどこの反射が強くなっています。
今度は、他の鳥の巣に自分の卵を置いて育てさせてしまう鳥、ジュウイチというカッコウの仲間の例を見てみます。
他の鳥の巣で生まれたジュウイチは、翼の裏側に強く紫外線を反射する部分を持ちます。ヒナはこれを仮の親にアピールすることで、多くのえさをもらえることがわかっています。
−−このように、鳥には人間には見えていないものが見えていたり、それを利用したさまざまな生活が営まれているのがわかります。
本書には他にも、
- どのようにして鳥の翼はあのように美しい色彩をもつにいたったのか?
- 鳥のどうして渡りを正確に行なえるのか?
- 鳥たちのさまざまな繁殖スタイルはどのように進化してきたのか?
など、多くの話題を解説しています。
鳥類ファンなら知っておきたい鳥たちの生活史・進化・保全活動に関わる豊富な情報を、多数のビジュアルとともに紹介した『遺伝子から解き明かす鳥たちの不思議な世界』の詳しい内容は、下のリンクからご覧になれます。