寄生バチと狩りバチの不思議な世界
編=前藤薫
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丸山宗利氏 推薦!
「ハチというと人を刺す昆虫という印象を持つ人が多いが、大半は他の生物に寄生し、人に害を与えることはない。世界では15万種以上のハチが知られているが、その背景には寄生相手との駆け引きで進化した、驚くほどの生活様式の多様性がある。本書では日本の気鋭のハチ学者たちが、世にも面白いハチの多様性を余すところなく紹介している。」
業界初!
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「毒針」と「大アゴ」によって築いた彼らの王国の秘密とは?
サソリやエイなど、毒針をもつ生き物は少なからず見られるが、相手を自在に操作するものは、寄生バチ・狩りバチ以外にほぼ見当たらない。この毒針と、麻酔した相手を運ぶのに適した大アゴを駆使して、少ないコストで多くのエネルギー源を獲得する彼らの、不思議な生態と進化の物語をていねいに紹介。
どのようにして、哺乳類や鳥類を圧倒する種数にまで多様化したのか?
哺乳類6000種、鳥類9000種とされる。一方ハチの仲間は15万種で、哺乳類と鳥類の合計よりも10倍の種数をほこる。これほどまでに豊富に多様化した理由や、進化のメカニズムとは? あらゆる昆虫に寄生し、植物からクモ、さらに同じ仲間にまでも寄生して餌とする彼らの多様化の不思議をくわしく解説。
なぜ、寄生した相手を生かしたまま食べるのか?
ダーウィンはヒメバチを見て、「毛虫の体内からむさぼり食べる冷酷無情な生物を、神が創造されるはずがない」と、神による生物の創造を疑った。ダーウィンが進化論を唱えるにあたり、間接的な理由ともなった寄生バチの、おぞましくも、人を惹きつける寄生方法をくわしく解説。
神を否定した寄生バチ/「膜状の翼をもつ昆虫」の誕生/ふたつの古い道具 産卵管と大あご/ベジタリアンから始めた/たぶん植物のなかで起こった 寄生バチの誕生/くびれた腰と「2枚翅」/動きを封じて寄生する 殺傷寄生/卵の殻は安全なシェルター/育てながら寄生する 飼い殺し寄生/魔の時間が進化させた多様性/闇夜への進出と「アメバチ風貌」/小さな寄主を大きく育てる/においや動きを手がかりにして探す/寄生バチにも寄生する/巣に運び込む寄生バチ 狩りバチの誕生/ゾンビにされるゴキブリ/父親をもたない息子たち/真社会性のパラドックス/生物農薬とバンカープラント法/ベジタリアンへの回帰/翅を捨てるのはどちら?/なりすまし 守るか攻めるか/ハチの世界の大進化
カメラ好きが注目!/奇抜な装い/世界一のハチ/生い立ちの違う男女/人とマイクロハイメノプテラ
クヌギに実った謎のどんぐり/おいしい隠れ家/植物に寄生する寄生バチ/奇抜なこぶは誰のもの?/タマバチが虫こぶを作るわけ/真っ赤なこぶには毒がある?/ノミのたね/虫こぶの甘い蜜/身近に潜む裏切り者/自立した居候/地を這う母と空飛ぶ子/バラの葉っぱの金平糖/タマバチはいい虫? わるい虫?/天敵としてのタマバチ/どんぐりの木と小さなハチ
ヒメバチ科は、最多種数の寄生バチ/ヒラタヒメバチ亜科群/ヒメバチ亜科群/アメバチ亜科群/謎のヒメバチ、ミズバチとアリヤドリバチ/水に潜るハチ ミズバチの仲間/ミズバチの生態/水生昆虫へのアプローチはさまざま/アリの幼虫を狙うハチ アラカワアリヤドリバチ/約100年前のイタリアでの観察/年間スケジュールと産卵行動/小さなアリに大きなヒメバチが寄生する謎/アリ幼虫寄生への道
クモヒメバチというハチ/産卵 死のカウントダウンのはじまり/異端の寄生様式/融通の効かないスペシャリスト/クモヒメバチの多彩な産卵行動/安全に蛹化するための寄主操作/現在から過去をたどる/クモヒメバチの来た道/空中網への適応
寄生バチの生活/昆虫の体を守る仕組み/寄生バチに欠かせない「三種の神器」/寄生バチが生き抜くからくり
膜翅目の不思議な生殖スタイル/ハチの性決定の仕組み/細胞内共生微生物とは?/ハチを雌だらけにする/ハチにはあまり見られない他の性操作/天敵タマゴバチを強化する/ハチの性決定システムの有利性/母系伝播する共生微生物の利害と一致して進化した?/雄殺しする共生微生物から逃避して進化した?
多胚性寄生バチとは?/キンウワバトビコバチの生活史と胚子発生/多胚形成の分子メカニズム/兵隊幼虫と真社会性/異種競争者に対する防御/共寄生による兵隊幼虫の増員/兵隊幼虫のもう一つの役割 性比調節/多胚性と社会性の進化をつなぐもの/異種競争者に対するもう一つの防御方法 液性排除因子/胚子の寄主体内への侵入/「分子擬態」による組織親和的な侵入
寄生バチは広い世界で如何にして寄主を探すのか/植物のSOSとボディーガード/木の幹を食べるハチ、キバチ/キノコとキバチの共生関係/共生菌を持たないキバチの戦略/キバチの寄生バチ/ヒラタタマバチ類の寄主探索/ヒラタタマバチのその後 メスをめぐるオス同士の闘い/独脚蜂の謎
キノコバエを食べるハチ/難しいハエヒメバチの分類/ハエヒメバチの分類修行/日本産ハエヒメバチの多様性/シイタケを守れ! 昆虫学者の戦い/シイタケを食べるハエ/ナガマドキノコバエに寄生するハエヒメバチがいた/ハエヒメバチの正体を調べる/シイタケハエヒメバチは新種か既知種か?/シイタケハエヒメバチの野外での分布を調べる/天敵としての高いポテンシャル/二種目の寄生バチを発見!/ヨリメハエヒメバチの生態/今後の展望
他のハチとはどう違う?/寄生バチから進化した有剣ハチ類/多彩な採餌様式/寄生バチから狩りバチへ/アリガタバチでみられる社会性/有剣類の飼い殺し寄生/カマキリのようなハチ、カマバチ/カマの獲得/はさみの形と使い道/ウンカに運ばれるカマバチ/運ばれた先での運命/引っ越しを成功させる秘訣/自由生活者に寄生する功罪
ハチの楽園 茅葺屋根/竹筒トラップ/管住性ハチと環境/ハチの敵はハチ/綱渡りの寄生者たち/ダニと管住性ハチ/ドロバチを飼う/アカリナリウムの謎/天敵を撃退/寄生者、ときどき用心棒/謎は続く/竹筒トラップの勧め
クモバチとは/日本の原始的社会性クモバチ キマダラズアカクモバチ/他の原始的社会性クモバチ/クモバチにおける社会性進化の要因
ハチの探し方/ハチを採集する道具/トラップによる採集・調査/寄主から羽化させる/標本作製の意義と使う道具/標本の命、ラベルをつける/大きな寄生バチの標本作製法/小さな寄生バチの標本作製法/名前を調べる/同定の練習法/同定依頼の仕方/DNAバーコーディング/標本の保管
日本昆虫学の学会誌「昆蟲(ニューシリーズ)」に新刊紹介が掲載されました
【筆者紹介】
前藤 薫(編著者、第1、14章):神戸大学大学院農学研究科教授
松尾和典(第2章):九州大学大学院比較社会文化研究院生物多様性講座助教および九州大学共創学部専任教員
井手竜也(第3章):国立科学博物館動物研究部研究員
小西和彦(第4章):愛媛大学ミュージアム教授
松本吏樹郎(第5章):地方独立行政法人大阪市博物館機構 大阪市立自然史博物館主任学芸員
高須賀圭三(第5章):慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教
中松 豊(第6章):皇學館大学教育学部教授、教育学部長
三浦一芸(第7章):農研機構・西日本農業研究センター
岩淵喜久男(第8章):東京農工大学大学院農学研究院名誉教授
藏滿司夢(第9章):日本学術振興会特別研究員PD/農研機構・生物機能利用研究部門
渡辺恭平(第10、14章):神奈川県立生命の星・地球博物館学芸員
向井裕美(第10章):森林総合研究所森林昆虫研究領域任期付研究員
三田敏治(第11章):九州大学大学院農学研究院助教
岡部貴美子(第12章):森林総合研究所生物多様性研究拠点、拠点長
牧野俊一(第12章):森林総合研究所生物多様性研究拠点、研究専門員
清水 晃(第13章):(財)進化生物学研究所および東京都立大学・客員研究員、東京大学総合研究博物館・研究事業協力者
(上記は本書執筆時点でのデータです)