日本の運動部の変化を象徴するものが、「根性」という言葉の流行である。根性自体は古くから使われてきた言葉だが、それが「苦しみや激しい訓練に耐え、へこたれないで事を成し遂げようとする強い気力」といった意味で使われるようになるのは、1950年代の後半以降であり、その社会的な普及の起爆剤となったのが東京五輪だった。東京五輪の選手強化委員会は、『根性づくりテキスト』を作成して選手強化を行ない、女子バレーボールチームの監督、大松博文の『おれについてこい!—わたしの勝負根性』がベストセラーとなり、その金メダル獲得のシーン(図6)のテレビ視聴率は67%を記録した。東京五輪の後には、『巨人の星』をはじめとする「スポーツ根性マンガ」が爆発的にヒットし、こうして「根性」は、その後1980年代半ばまで、日本のスポーツ界の精神的な主柱となっていった。