12月らしい寒空の中、イチョウが色づく並木道を抜けた先の、目黒駅から徒歩5分ほどにある国立科学博物館附属自然教育園の中で、2019年12月21日(土)に2019年第3回日本甲虫学会東京例会が行われました。
以前参加した蛾類学会(2019秋の例会)と同じく、二階の講義室で開催。
11:30頃に着くと、まだ人はまばら。数名が雑談しているだけだったので、一度退室し、改めて講演の始まる13時前に入室。すると、講義室はすでに満席になっており、座れる席は一番前の端っこだけという状態。
隣の席の方は綺麗なタマムシの標本を持っていいて、午前中の同定会に参加されたのかなと思っていたら、この方が第1回目の講演の演者であった。
着席すると間も無く講演が。
今回の例会は3つの講演が用意され、最初は農研機構生物機能利用研究部門の神村学氏によるもので、コガネムシの発色の仕組みについて(正式には「コガネムシの円偏光選択的構造色:発色機構とその進化の解明を目指して」)。
難解なイメージの題目だったが、演者の巧みな解説と豊富なスライド資料もあって、基礎知識のない人でも理解しやすく、また昆虫好きなら共感できるよう話題をいくつも示されつつ進行された。
またあとでわかったが、聴講者のみなさんもある程度の知識がある方が多かったようだ。
構造色と聞いてすぐにイメージできる人は多くはないだろう。演者によれば、この発色メカニズムは個体同士のコミュニケーションに利用されるなど、昆虫の生態に大きな役割を持っていて、近年の解析技術の発展によって急速に解明が進んでいるものとされる。
話は他にも、最新のシークエンサーがいかにローコストで運用できるか、RNAiによる構造色発色に必須の遺伝子の同定などが取り上げられた。
最後に質疑応答がなされ、昆虫にアルビノはできないのかなど多くの質問が挙げられていた。中には質問ではなく自身の仮説を発表するものもいたり、終始真剣さとなごやかな空気の中進められ、聴講者の知識欲求を十分に満たしていた印象を受けた。
第二の講演は東京農大学部4年生原田惇作氏によるもの。
ヒメハナキミキリのオス交尾器に関するもの(正式には「「日本産ヒメハナカミキリ属雄交尾器内袋の比較形態学的研究」)。
多くのオス交尾器のスライドをもとに、内袋の膨らませ方、入れるワセリンの量など、取り扱い上のポイント、種間の比較が紹介された。
第三の講演は第二と同様、東京農大の佐伯智哉氏によるもの。
第二回はオス交尾器だったが、今回はタマムシのメス交尾器(正式には「日本産ナガタマムシ属の雌交尾器における比較形態学的研究」)。
こちらも多くのスライドとともにメス交尾器のそれぞれの部位の特徴、種同士の比較を紹介。質疑応答の中ではスケッチがいまいちなので頑張ってとの指摘もあった。
最後に聴講者の自己紹介の時間があり、各自の好きな昆虫(「○○屋」)が紹介されたがカミキリ、タマムシ、ゴミムシダマシ屋の多い印象であった。
各地で行われる昆虫関係の学会、研究会、採集会など、シリーズで紹介していきます。