「地球上で最も繁栄する生き物」また「多様性のチャンピオン」といわれる昆虫。なぜここまで多くの種類にまで繁栄できたのでしょうか。
この説明をするため、これまで多くの学説が挙げられてきましたが、これという決定的なシナリオは定まっていないようです。
ただ、種類が多いということは、それだけ多くの交尾スタイルが進化したことにも繋がります。
例えばトンボの交尾スタイルを見てみましょう。
トンボのオスの生殖口、つまり精子を出すところは、腹の末端にあります。
ただ、ここから直接メスに精子を渡すわけではありません。
オスは腹の一番頭よりの部位(基部)に、副性器という別の生殖器をもっています。
ここに生殖口から精子を移しておきます。
実際にメスとの交尾の際には、メスが腹部を折り曲げ、メス自身の生殖口をオスの副性器にくっつけます。
その後、精子の受け渡しがされて、交尾が成立します。
なお、オスとメスとが交尾の際に作る、この時のシルエットがハート形を形作り、なにか人間の男女に見られる恋愛関係も感じられるかもしれません。
そうは言っても、実はこの姿勢、オスが把握器という部位によってメスの首根っこをひっつかまえていることになり、これも人間から見れば、かなりハードな交尾スタイルと言えます。
しかも交尾の時間は長いと6時間にも及ぶことがありますので、かなりメス(女性)に無理を強いていることになります。
トンボのように変わった交尾スタイルもいますが、古い祖先的な昆虫ではメスが上にのるスタイルが多く、その後さまざまな交尾スタイルに進化していったようです。
ただ、上にメスがのるスタイルですと、メスが自由に動いてしまい、なかなか交尾が成立しないことが多くあります。
そのような交尾スタイルをとる昆虫、ゴキブリでは、オスの背からメスが好む分泌物を出すものもいます。
メスが分泌物を食べている間に、生殖器を結合させて交尾を成立させます。
一度結合するとメスが動こうが関係なくお互いにそっぽを向きながら、交尾は完了します。
(この記事は『昆虫たちの不思議な性の世界』「4章 交わりの儀」にもとづいて書かれています)