これまでのメルマガでも、「世界でもっとも○○な昆虫」を紹介してきましたが、
今回は長さでのナンバーワン。
前回のオオスズメバチは、最大級のサイズ感を紹介しましたが、
迫力ある見た目に対するご返事もいただきました。
「色づかいは、虎に似た獰猛さを感じます!」
今回も、プロポーションと体色を画像付きで紹介しますので、
同様の印象をもたれるかもしれません。
おはようございます。
一色出版の岩井峰人から、
メルマガをお届けしています(毎週月曜の更新)。
「図8.ウマノオバチ。産卵管を含めた体長は約20cmに達する。描画素材提供:伊藤誠人。」
と解説するのは、前藤薫教授。
「産卵管を含めると世界最長クラスの昆虫であるウマノオバチ(Euurobracon yokahamae)(図8)も、長い産卵管を駆使して木の中にひそむカミキリムシの幼虫あるいは蛹に産卵する殺傷寄生者である。」
漢字表記は「馬尾蜂」。
語感どおりの形態でないでしょうか。
なぜ、これほど長い産卵管が必要なのか。
これほど長いと、多くのデメリットを持つことにならないのだろうか。
このような疑問が自然と湧いてきませんか。
「幹の割れ目からカミキリムシの孔道に侵入して、
孔道のなかで何回も向きを変えながら
最終的に産卵管の先端を寄主に到達させることが明らかになった。」
長らく謎であったのが、最近の研究によって上記の見解が
得られたようです。
しかし、疑問がつづきます。
うまく寄生でき、羽化が成功したとしても、
奥深い木の孔の中から、どうやって脱出するのでしょうか。
「そこで役に立つのが大あごである(図9)。
ウマノオバチの丈夫な大あごは、孔道につまった木くずや樹皮を砕いて
脱出孔を開けるために使われる。」
昆虫でも人間でも、アゴといえば、食事のためと考えます。
でも、寄生バチの使い方は独特で、
・羽化した場所から外界に脱出する通路を開ける
・獲物を巣に運ぶ
このような使い道のために、大あごを利用しているようです。
そのため、頭部の大部分は脳ではなく、
大あごを動かすための筋肉によって占められています(動画01)。
(下の画像は、本書オンライン版では
動画で外骨格と筋肉系のようすを紹介しています)
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図14.サキグロホシアメバチ(Enicospilus ramidulus )。ヤガ類の幼虫に寄生する。夕暮れから夜間にかけて活動する寄生バチの多くが、黄色い体に長い触角と大きな単眼をもっている。写真提供:清水 壮。(第1 章 ハチの誕生と進化、前藤薫より)
「大きな単眼」は系統の離れた寄生バチでも見られます。
共通する特徴は夜行性ということ。
夜間であれば黒い色素によって有害な紫外線から身を守る必要がないし、
警告色や色によるも闇夜のなかでは無意味なので、
体色は一様に黄色でよいようです。
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一色出版では、
動画を含めたオンライン版で、
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また、本では白黒で小さくなった写真も、
カラーぼ高解像写真で見られます。
お手元のスマホやPCで、
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