先日のメルマガでは「世界最小の昆虫」を紹介しました。
「北米に生息する体長0.139mmのホソハネコバチの一種、
Dicopomorpha echmepterygisのオス成虫。
そのサイズは、単細胞生物のゾウリムシと、
またはヒト卵細胞とも同程度。」
細胞レベルの昆虫がいるということにも惹かれますが、
同じく細胞レベルで起きる昆虫の不思議な現象があります。
寄主の細胞に侵入する際に見られる、
「擬態」です。
昆虫の擬態はシロオビアゲハなど鱗翅目で有名ですが、
あくまで個体レベルであり、人間の目でも見ることができます。
しかし、細胞レベルでも、
擬態という現象があるようです。
おはようございます。
一色出版の岩井峰人から、
メルマガをお届けしています(毎週月曜の更新)。
キンウワバトビコバチというコバチは、
「1つの卵から 2000 〜 3000 頭もの子が生まれます。」
(寄生バチと狩りバチの不思議な世界、8章、筆者:岩淵喜久男)
体長1ミリという小さな体からは、
約50μmという小さな卵が産み落とされます。
(寄主はキクキンウワバなど)
寄主がまだ初期胚の状態の卵に産み付けられます。
この寄主の胚のなかに侵入するとき、
特別な現象が起きます。
寄主の卵細胞が微絨毛(びじゅうもう、細胞表面の小突起)を伸ばし、
「組織親和的」に寄生がおこなわれるとされます。
つまり、寄主の胚細胞は、侵入してきたトビコバチの胚子を拒絶するどころか、
積極的に受け入れているようです。
というのも、寄主細胞は毛細気管を伸ばし、
トビコバチの胚子に酸素を供給しているのです。
「どうやら、寄主の細胞は、
トビコバチの桑実胚の細胞を同種の細胞と勘違いしているらしい。」
これを称して、「分子擬態」とも呼ばれています(用語として本
来の使い方ではないが、とことわっていますが)
この話題は鱗翅目と膜翅目という、離れた系統の話でしたが、
寄生バチの寄主は、同じ仲間の膜翅目にも寄生することが
知られています。
かやぶき屋根など、筒状のもののなかに好んで営巣するハチに
ドロバチがいます。
彼らは「筒状バチ」とよばれますが、
最たる天敵がハチ。
天敵にはセイボウ科、ヒメコバチ科が知られています。
彼らが寄生する相手は、スズメバチなど、大あごと毒針をもつハチたちです。
そのため、母バチに見つかったときにそなえ、
セイボウ科のハチは、アルマジロのように身を丸め、頑丈な外骨格で
防御する習性をもっています。
(「12章 竹筒のなかの小宇宙」牧野俊一・岡部貴美子より)
次回は、この管状性バチがもつ、
小宇宙といわれる不思議な世界を紹介したいと思います。
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