「本書は専門家だけでなく、アマチュアの昆虫・生き物ファンをターゲットにしており、詳しく知りたいという高校生などを特に意識した本で、平易な文章とわかりやすい内容で簡単に理解でき……」
こういった謳い文句はよく聞くが、本当に高校生でも面白くて理解できるものになっているのだろうか? といつも思ってしまう。自分だけでなく、多くの編集者は、こういう悩みはいつも持っているのでは・・・
では実際に読んでもらおう。
生き物に特別興味を持つ、栃木県足利市在住の高校生に連絡をとり、原稿段階だが『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』のなかから抜粋したものを読んでもらった。読み終えたタイミングで会いに行き、どういうところが面白かったか、難しかったかなど、少し話を聞いてみた。
待ち合わせしたのは館林駅。近くのお店に入って、取材を開始。
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こんにちは。せっかくの休日で悪いけど、よろしくお願いします。
「はい、こちらこそお願いします」
いろいろな生き物に興味をもっているみたいだね。どういった生き物が好きなの?
「まず(猛禽類の)ノスリですね。飛び方が特に好きで、低空で飛んで狩りをするところがいいです。だいたい、格好よさは、好きになるポイントになります。だから猛禽類は全体的に好きです。」
そういった意味では、一番好きな生き物は?
「シロハヤブサです。北海道に毎年くるという鳥なんです。普通のハヤブサより少し大きいハヤブサで、(そういったことを)鷹匠の人も言っていました。」
鷹匠に会ったことがあるんだ。
「イベントがあって。タカの害鳥駆除の実演みたいのをしていて、その時に。スタッフの人にインタビューされて記事にもされました。」
結構熱心なんだね。ところで、好きな昆虫はいる?
「これまで捕まえに行ったのはチョウが多いと思います。好きなのはカラスアゲハ。でかいチョウが好きです。あとはアサギマダラ。赤城(自然園)で羽に番号を書いて飛ばすというイベントがあって、自分も参加してやってみました。けど、(どこに飛んでいったかは)わからなくなりましたが。」
今回渡した原稿(寄生バチと狩りバチの不思議な世界)に話は移るけど、もっと詳しく知りたい、ここは面白いという箇所はあった?
ヒメバチのクモ操作が面白い。
「クモヒメバチの箇所です。ヒメバチがクモを操作するというところは、不思議な感じがするし、初めて知りました。何となくはわかりますけど、(もっと詳しく)その仕組みがわかったら面白いなと思います。」
では逆に、ここは難しすぎるという箇所はあった?
「それはなかったです。ただ、漢字で難しいものがあって、例えば、(膜翅目は)「まく」しか読めなかった。それにどういう昆虫が含まれているのかもよくはわからないです。」
そもそも、どうして生き物に広く興味を持つようになったの?
「図鑑を見てですね。あと、埼玉に住んでいた頃は電車が好きだったけど、こっち(栃木)に引っ越してきて、電車のかわりに生き物が好きになってきました。」
生き物のどういうところに興味をもったの?
「昔は格好よさでしたけど、今は生態です。不思議なところを初めて知ったりすると楽しいです。」
友達とこういった話はする?
「(進化などの話も好きだけど)周りの高校生の友だちに話しても誰もついて来れない。だから生物部の部員も増えないです。女子部員もいないし。自分が昆虫の面白いところとかみんなに教えられたら、部員も増えると思うのですが。」
この後、話は部活動や、将来の仕事(水族館か動物園に務めたいとのこと)などに及び、一般講演のある学会などを紹介して、とりあえず終了。
彼と部員仲間にコメント入れしてもらった原稿を見ると、確かに「漢字の読みがわからない」「用語の意味がわからない(収斂など)」というのが目立っている。
内容自体がわからないというよりも、語の意味につっかかってしまうようだ。
今まで、編集時にはわずらわしくなることを気にして、あえてルビふりや用語の注釈は避けてきたが、もっと入れてもいいかもしれない。
とにかく、天気のいい休日なのに取材につきあってくれた男子高生D・Yくん、大変ありがとうございました!
【読みのわからないもの】
・堅果
・穿孔
・鱗翅目/膜翅目/鞘翅目
・蛹
・繭
・上科
・収斂
【意味がわからないもの】
・学名(なぜ記載されているのか?)
・サンプリング
・ミニマムエッセンス
・収斂
【面白かった箇所】
・寄生バチの誕生
・クモヒメバチによる飼い殺し寄生
・クモヒメバチによる寄主クモの操作
下の動画は「クモを殺して網の上でまゆを紡ぐクモヒメバチ」(本書第6章、挿入動画より)
今回の記事で触れた昆虫の脳については、下の記事でより詳しく紹介しています。さらに知りたい方は、分かやすく紹介しているので、ぜひ読んでみてください。
また、昆虫ふくめ、いろいろな生き物の脳を、以下の本で紹介しています。
驚異に満ちた脳の不思議な世界を知りたい方は、ぜひ手にとってみてください。
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